04……韓国 Part 2:
グレイトフル・マスター、キム・ソクチュル


キム・ソクチュルのホジョク(胡笛)演奏の魅力はどう説明したらよいのだろうか。尖ったパワフルなサウンド、泥臭くうねるサウンド、独特のヴィブラート…、それでいて哀しさがにじんでくるような旋律。ホジョクは実に複雑な魅力を持った楽器だ。ジャズのアルバート・アイラーと比較などするより、韓国の巫楽(ムアク)、芸能の世界で長く修練した東アジア・シャーマン・ミュージック界の首領であり、グレイトフル・マスターだ。

キム・ソクチュルは、1922年生まれ。釜山から江陵に至る東海岸を拠点とする巫俗技芸集団の首長であり、重要無形文化財第82号=人間文化財でもある。またホジョクで散調を演奏できる第一人者ともいわれている。巫歌のキム・ウソン(金有善)はソクチュル夫人でもある。


キム・ソクチュル(金石出) 写真:清水一郎

ホジョクは、テピョンソ、ナルラリ、スェナプとも呼ばれるダブル・リードの木管楽器。西洋楽器にはない極めてノイズ成分の多いサウンドが魅力だ。いわゆるチャルメラ型管楽器は、中国のスオナ、トルコのズルナ、インドのシャーナイ、タイのピー・チャナイ・他、マレーシアのスルナイ、インドネシア、ミャンマーと広く分布している。日本の(昔の夜なきソバ屋で知られる)チャルメラは、ポルトガルから伝来といわれている。

ノプセパラム/キム・ソクチュル
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無伴奏でのソロ演奏集。チャンゴやクェンガリ、チンなどの打楽器と歌。まさにシャーマニックなこぶしの利いた歌は魅力的だ。最後の曲は、ホジョクの鮮烈なソロ演奏。
巫楽(トンヘオグクッ)
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現在も東海岸で盛んに行われているクッのメインのひとつ「オギクッ」。キム・ソクチュルとキム・ウソン(巫歌)の夫妻が中心のファミリーでの録音。巫歌と伴奏が見事に一体となった傑作。長尺の演奏のなかホジョクが入る部分は多くはないが、人を惹きつける巫歌にからむ合いの手や打楽器の独特のリズム感に酔いしれることができる。
翔 Final Say/キム・ソクチュル
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このソロ・アルバムは巫楽を離れ、管楽器奏者ソクチュルに焦点をあてた作品。3人の管楽器奏者(Wolfgang Purshnig、梅津和時、Lee Jung Sik)との共演では、ジャズ・イディオムVSホジョクというような白熱した演奏が聴かれる。2曲目は、Purshnigの演奏するタルゴットというハンガリーの管楽器(アラブ的雰囲気)とのホジョク+チャンゴ。異色なセッションだ。続きは、クェンガリとのデュオ、チャンゴとのホジョク散調、最後は異なったチューニングでのオーヴァーダブによるホジョク3重奏で通常聴くことのできない音空間を創出している。

以上、すべて韓国Sound Spaceからのリリースです。ハングルと英文のノーツがあるが日本語がないのが残念、曲名・演奏者・楽器のデータが英文でもより詳細に掲載してあると助かります。


◎Sound Space : 清水一郎氏
韓国の古典音楽の録音・製作に尽力するレーベル、韓国のSound Spaceから「巫楽(ムアク)シリーズ」やキム・ソクチュル関係や民謡、新進の古典演奏者がリリースされている(ソウルで買ったCDで初めて知った)。日本のスタッフとして、清水一郎氏がプロデュースを韓国スタッフと共同でされている。その清水さんに電話で少しお話を伺った。

60年代からジャズのミュージシャンの写真を撮っていた写真家の清水さんは、70年代に作家の故・中上健二の勧めで韓国に出かけ、巫楽やキム・ソクチュルらの韓国の音楽と出会い、かつてのジャズと同種の衝撃を受けたそうだ。やがて80年代中頃に、今や世界的家電メーカーのSamsungがスポンサーとなり、レーベルSound Spaceが設立され、韓国の古典音楽の録音・製作を始められた。そのタイトルは数十タイトルにも及ぶ。今年も民謡などの録音予定があるそうだ。ビクターからのソクチュルの録音(前ページ掲載)も企画・プロデュースされている。今の状況は、主に東海岸の世襲巫のものを除き、若い世代は国学院などで譜面で学ぶ音楽は、かつてあったような迫力や魅力は薄くなっていると嘆かれる。
共同体意識が希薄になっている現代においては当然かもしれない。記録・保存とはうらはらに衰退してゆく古典音楽・民謡。日本でも同様である。

日本のベテラン・ジャズの梅津和時や斎藤徹らとも共演したり、WOMADのロンドンでも演奏歴のあるキム・ソクチュルは、年齢に負けず健在で演奏はまったく衰えていないそうだ。梅津和時が望んだというキム・ソクチュルとの未発表デュオの録音があるそうで、それも今後リリースしたいと、清水さんは話されていた。

▼Sound Space リリースの一部
ノプセパラム/キム・ソクチュル
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巫楽(トンヘオグクッ)
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翔 Final Say/キム・ソクチュル
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▼Sound Spaceの日本国内でのオンライン通販ページ


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韓国 Part 3:
contents

:: MUSIC
:: 民族音楽 耳のよろこび
00: Reference
01: タイ
02: バリ
03: インドネシア
04: 韓国

05: 沖縄

(番外) Cafe Mekong/Hotel Vietnam

舩橋楽器資料館

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■韓国音楽探検
植村幸生・音楽之友社刊

シナウィ、散調、プンムル、サムルノリ、パンソリと韓国の音楽文化を探る優れた内容。


■「ソリ」の研究
櫻井哲男・弘文堂刊
フィールドワークに基にした研究書。


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